文学者の自負

退屈読本 上 (冨山房百科文庫 18)

退屈読本 上 (冨山房百科文庫 18)

退屈読本 下

退屈読本 下

最近折に触れて取り出してはあちこち読んでいるのがこの一冊である。

あの「秋刀魚の歌」の佐藤春夫がさまざまな話題について文体も配列も勝手気ままに書いたという印象の一冊である。

随筆として古くから評判の高いものであるが、最近また文章を書き始めたのを機に改めて手にしたところ、どこを読んでも面白いのである。

老父との風流なやりとり、美術批評、文学時評、ちょっとした出来事などなど、自由闊達な文章で展開される。

そこに文学者としての強い自負と、自分の感性や価値観に対する自信が隠しようもなく溢れている。

彼が懸念した文学の衰退は残念ながら現在さらに進んでしまったようだ。